食事やサービスに「コスパ」を求める日本、なぜなのか

 


だいぶ前にふと思ってツイートしてた記憶があるんですが、カナダに住んで、それから日本に戻ってきて改めて思うことの一つに、「日本ほど食事に『コスパ』を求める国ってあんまりないんじゃないかなあ」ということです。
そのときに興味を持ってリプを下さったのが、小保下グミさん だったと記憶しているのですが、今日、小保下さんの note を読んでいて、ああ、もしかしたらこれは関連のある話かもしれないと思ったので、ちょっと書いてみたいと思います。


念のため最初に書いておくと、今から書く内容は完全に私の「感覚」でとらえた印象でしかなく、国や文化をかなりざっくりとひとくくりにして語っています。それは単に、私が今まで見てきたものや感じてきた印象によるものなので、もちろん例外はたくさんありますし、当てはまらない、あるいはとんでもない勘違いも含まれている可能性があります。

まあ、しがない小市民が脳内でポヤポヤと考えたことをつづっているだけなので、あまり目くじら立てずに、「ふーん」くらいの感じで読んで頂けたらよろしいかと思います。


①外食に対する考え方、意識が、海外と日本ではだいぶ違う

  1. とにかく食事が安い日本
  2. 外食がめちゃくちゃ高くつく北米

まず、1についてなんですが、これは言わずもがな… って感じですね。
日本に帰ってきて、いや、カナダにいるときからインスタやらを見て思っていたのは、とにかく食事にやたらコスパを求めるなあ、ということでした。具体的に言うと「ワンコインでこんなに豪華なランチが!」とか「〇〇円で、これだけ食べ放題!」とか、多分皆さんも「あ~、あるある」と思い浮かグルメアカウントやリール動画がいくつかあるんじゃないかなーと思います。
ただでさえ、「日本の食べ物は安くておいしい!」と言われていたのが、ここ数年の「コスパブーム(?)」あるいは経済低迷…?で、さらに激戦化しているというか、ものすごい熾烈化している気がします。

で、2についてなんですが、これもカナダにいる頃にかなり感じていて、というか、北米(もしくはヨーロッパもかな?)はとにかく外食が高くつく!そして人々が、わりとそれを甘受しているというか、「高い!」と文句を言いつつも、普通にチップは20%払うし、「外食はお金がかかって当たり前」というコンセンサスができてるなあ、と、なんとなく感じていました。そんな中で、「そういえば日本みたいに、安さをアピールポイントにしてる飲食店って、ほとんど見ないな…」と思ったわけです。(で、そんな感じのことをツイートした)
もちろん中には、いわゆる食べ放題、All you can eat のレストランもありますし、ハッピーアワーを設けているお店も多々あります。が、日本のように多くはないし、そこまで強烈に低価格をアピールしているわけでもない。
で、私なりに考えた結論?は、「北米では、外食は非日常のイベントに近いのではないだろうか」ということでした。

これ、前にも書いたような気がしますが、日本のようにサクッと食事を済ませるというよりは、食事だけではなく、お店の雰囲気やサーバーとの会話を楽しむ… みたいな、ある意味、お金と時間をかけて楽しむエンターテイメントみたいな面が大きいんじゃないかなーと。
だから、良いサービスを提供してくれたサーバーにはチップをはずむし、値段にケチケチこだわらないのかな…とか。
つまり、外食に対する意識の違いが大きいのかも?

②食事だけじゃないかもしれない

  1. とにかく「安さ」「コスパ」が目につく日本
  2. カナダは価格にそこまで固執しない印象

と、つらつらと考えていて、いやこれってもはや食事に限った話じゃないかも… と少し思いました。
最近は「タイパ」なんて言葉も出てきたみたいで、日本人のコスト意識がとにかく暴走気味な気がします。ちょっと前まではユニクロだのコストコだのと騒がしかったソーシャルメディアが、今や業務スーパーやワークマン、しまむらについて熱く語っている昨今。
どのお店、メーカーも、いかに競合店より1円でも安く売るか、知恵を絞りまくっているのがひしひしと伝わってきます。
「日本が貧しくなった」といってしまえばそれまでなんですが、かといってカナダやアメリカが好景気なのかというと、そういうわけでもない。なぜ日本はここまで「コスパ」「低価格」に固執するのか…

かといって、もちろんカナダ民が物価に無頓着というわけではないです。スーパーやドラッグストアの広告にセール品が掲載されると、かなりの速さで売切れたりしています。特に今はインフレが狂気の沙汰なので、みんな少しでも安く買おうと、セール初日の朝にお店へ詰めかけたり、低価格品へのそれなりの需要はある模様。
(が、しかし今思い返すと、スーパーも薬局も、広告が入るのは週に一回ポッキリなんだよね、カナダ… というか私の住んでたエリアだけ?かなりあっさりしてる印象)

さらに、カナダ生活全般を通して感じたのは、「安いもの、安いサービスはそれなり。良いもの、良いサービスを受けたかったら、相応の金額を払いましょう」という意識が浸透しているのではないか、ということ。
これも前にどこかのブログで書いた気がします。チップも受け取らず、最低賃金で働くファストフードの店員が無愛想なのは仕方ない。でも、そこそこのレストランに行ってそれなりのサービスを受けたら、飲み物やデザートも頼んで、チップをちゃんと払うのが筋だよね、というような共通認識があるんじゃないかなと。

で、このへんが、今回の小保下さんのnote を読んでいて、私のなかでつながったのです。

③価格以上の価値を求めるか、求めないか

小保下さんの旦那さんは、自営業の主という大変な立場にありながらも、「仕事=人生」とはならず、いかに余暇を楽しく過ごすかをメインに考えていて、仕事は必要最低限の力でこなすタイプだそう。
これって… カナダ人と同じだ… と思ったのです。(いや、大方のカナダ人はもっとやる気ないしひどいと思うけど)カナダ人というか、日本人以外。

小保下さんも書いているけれど、日本人って、仕事に給料以外の「やりがい」とか「成長」「喜び」といった別の価値観を見出そうとしがち。これは別に悪いことではない。むしろ、それが日本人の素晴らしい点として、海外でも賞賛されたり、質の高い製品やサービスに結びついているのだとは思う。(が、それを利用して搾取する悪徳事業主も多い…)

で、自分が働くときにそういう意識(「労働はお金のためだけじゃない」みたいな意識)でいると、今度は自分がサービスを受ける側に立った時も、「価格以上の価値」を求めてしまうのではないかと。うーん、どうだろう?関係ないだろうか。でも、「コスパの良さ」を求めるっていうのは、つまりは価格以上のものを得たい、得をしたい、損をしたくない、という姿勢と同じものですよね…
もしかしたら最近の日本人には、良くも悪くも「価格以上の価値」、「ものやサービスそのものが持つ本来の価値以外の何か」を追い求める意識が染みついているのかも…

(そういえば日本人て、他国の人に比べて「他人が得をするのが許せない」「損をしたくない」という意識が強いとかなんとか… そのへんの傾向とも関係するんかな…)

ぽわーんと考えてみると、利益度外視で安い商品、サービスを提供するお店や、薄利でも一生懸命働いて何とか店を維持しているオーナー、みたいな存在が日本では多いし、そういうお店や人を「素晴らしい」と称賛するような風潮が確かにある。
(もちろん海外にもそういう事業主はいるとは思うけど、多分そんなに多くはないと思われる。)
そういうお店や人は「地域に愛され」てるとか、「庶民の味方」みたいな、ビジネス以外の側面で称えられて、素晴らしいこと、良いこととされていますよね…
それはそれで立派な生き方だと思うし、なかなかできることじゃないなあとは思うんですが、だからといって全員がそうあるべきとは思わないし、それで自分の生活が苦しいとか、人生がツライなんてなったら一体何のために働いているのか分からない…
アルバイトの店員にも完璧なサービスを要求したり、サービス残業で疲弊している人が多かったり、明らかによろしくない事態も起きているわけで。

ものやサービスに、本来の価値以上の何かを過度に期待することは、自分が提供する側、あるいは享受する側いずれにしても、長い目で人生を見たときに、そんなに幸福度に寄与しないんじゃないかなーと、カナダで暮らしてみて、そして今回、小保下さんのnote を読んで改めて思った次第です。
どうでしょうかね。







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