実録!インドの館【後編】
前回の続きです。ホントに当時の記憶がほぼない(というかわたくしは脳に欠陥でもあるのか、過去の記憶がほぼない)のですが、インドの館に関して、一つだけどうしても忘れがたい、そして4ヶ月早々で退去することを決心させた決定的な出来事について、今回は書いてゆきたいと思います。
前回も書いた通り、寡黙で優しいインド人妻は、どういうわけか常にキッチンでお料理をしており、わたくしの方も、日々繰り広げられるスパイシーな香りにもすっかり慣れていたある日のこと。
たしかもう冬も終わり、だんだんと春めいてきた穏やかな気候の頃でございました。その日は休日だったのか、インド人妻はいつも通りキッチンでお料理中の気配。インド娘も、わたしも、それぞれ部屋でのんびりとくつろいでいた昼下がりのことでした。
もちろん部屋のドアは閉ざしてはおりましたが、階下のキッチンから、熱した鍋に油をひき、何かを投入した、「ジューーーーー!!」という音が聞こえた、と思ったその刹那、
家中に拡散する、香辛料の強烈な香り!!!
いやもうそれは香りといった言葉を超越した、凄まじい刺激!!!
催涙ガスか!と思うような強烈な刺激臭に、くしゃみ鼻水、咳、涙が止まらない!!!!
2階にいて!ドアも閉め切っているというのに!!!!!
もう家中大パニックですYO!
涙と鼻水でまみれながら、わたくしは「もう、出よう。ダメだ、この家は… いつか命を取られる…」と、固く心に誓ったのでありました。
もうあまりに強烈な体験ゆえ、その後の記憶が定かではないのですが、インド娘いわく、「なんかやべえスパイス(おそらく唐辛子系)を大量にぶっこんだんだと思う」とかなんとか。まあ、言われなくても分かる。あれはおそらく殺傷力のあるやつ。
やらかした本人もおそらく無事では済まなかったと思う。その後、戦々恐々として過ごしたが、同じ目に遭うことはなかったので、きっと懲りたのだろう。そうでないと困るが。
そんなインドの館の思い出でした。
みんないい人ではあったけどね… ちょっと、文化の壁というかなんというか、私には刺激が(文字通り)強すぎて、やっていける自信がなかったですね。
というわけで、私の胸にはまた一つ、深いトラウマが刻まれたのでありました。